生き残った少女は誰?【彼女のいない飛行機】
全篇を通して興奮が持続する、素晴らしい読書体験でした。
久しぶりに本の感想を書きます。
書き方を忘れてしまったような気もしますね。
以前は読んだ本すべてに感想を書いていたはずなのに……!
* あらすじ *
1980年12月、イスタンブール発パリ行きのエアバスが墜落。
ただ一人、生後間もない女の子が生存していた。
同機には身体的特徴が著しく似た二人の赤ん坊が乗っており、どちらの両親も事故死していた。
DNA鑑定のない時代、二組の家族が女の子は自分たちのものだと主張する。
そして謎を追うべく雇われた私立探偵が、18年の時を経て最後に見つけた手がかりとは―?
仏ミステリ界の金字塔!
***
いやはや、なんて興味深いあらすじでしょうか!
あらすじだけでここまで興奮したのは久しぶりです。
飛行機の墜落事故、乗客全員が死亡と思われた絶望的な状況において。
たった一人だけ、生存者がいたのです。
それは、まだ生後まもない女の子でした。
その子は「奇跡の子」と呼ばれ、悲しみに暮れる関係者の唯一の慰めとなるはずでした。
しかし……。
その少女の身内だと主張する家族が二組現れてしまったのです。
少女は、いったいどちらの子なのか?
――というように、冒頭はこのような感じで展開していきます。
もう、これを読んだだけでワクワクしませんか?
わたしはもう、「ヤバイヤバイ!」と興奮しきりでしたよ。
さらに、ですよ。
長年事件を追っていた探偵が、結局真実を見つけられずに自殺しようとする場面が描かれます。
しかし、自殺する直前でのこと。
飛行機墜落を報じた当時の新聞を見た瞬間、「奇跡の子が誰なのか?」を示す手がかりを発見してしまうのです。
多くの人間が、何度も読んだはずの新聞。
それなのに、なぜ十八年もの間、誰もそれに気づかなかったのか?
この魅力的な仕掛けがまた、結末への興味を演出してくれます。
非常に分厚い物語ではありますが、長さをまったく感じさせない面白さでした。
海外物の文章が苦手な私でも、何の違和感もなく読み進められたのもよかったです。
物語全体を通しての謎もさることながら、調査の過程で浮かび上がってくる謎も魅力的です。
本を読み進める上で、抜群の推進力を発揮してくれることでしょう。
このミステリーに宿る魅力的な謎の数々、そして迎える大団円を、ぜひ堪能してみてください。